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2016.11.17

3年生『現代社会』の授業のひとコマ―かつての日本、「高度経済成長」の時代―

本校の教育全体を実務レベルで管理監督する者として、実際の授業を見学し、先生と生徒の様子や授業内容を確認することも大切な仕事だと考えている。このため、今日は3年生の「現代社会」の授業を見学した。

ベテランの中野雅史先生が授業担当。公立高校では進学校だけでなく、定時制高校での経験も豊か。大学でも教えている先生。

今日の授業は「高度経済成長」の続きだ。日本にも経済成長率が平均して年率10%の時代があったのだ。

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高度経済成長時代の日本人は自信をもっていたし、未来は明るいと信じていた、と中野先生。私自身が高校生だった時、アメリカの社会学者絵図エズラ・ヴォーゲルが著わした『ジャパン・アズ・ナンバーワン;アメリカへの教訓』が翻訳・出版された。図書室に置かれていた、この本のタイトルが今も脳裏に焼き付いている。いずれにせよ、1970年代、2度のオイルショックを乗り切った。この本が予言した通り、1980年代、日本経済は黄金期を迎えた。

そして、現在。

低迷しているとは言え、見方を変えれば成熟経済と言えるかもしれない。少なくとも、今の方が物質的に豊かになった。物があふれている。ところが、今は就職も簡単な時代ではない。今日の高校生は“夢”を持ちにくい時代に生きている。生徒はどれだけ当時のことを知っているのか。また、どう感じているのだろうか。

授業は復習から始まった。戦後、日本経済はGHQ(連合国軍総司令部)の政策の中で何とか立ち直ろうとしていた。しかし、なかなかうまくいかないことが多かった。

1955年から始まる高度経済成長。1973年までの20年近く、日本経済は平均して10%を超える経済成長が続くことになる。
では、終戦後、GHQの政策にもかかわらず日本経済がもたつく中で、

「この高度経済成長のきっかけとなったのは、何だったか知ってますか?」

と、中野先生の発問。

生徒が「朝鮮戦争!」と答えた。

「朝鮮戦争は何年に始まりましたか?」と矢継ぎ早に質問。

「1950年!」と生徒が答える。

その後、1953年に朝鮮戦争が休戦する。この間、確かにアメリカ軍による「特需」で日本経済は息を吹き返した。しかし、高度経済成長が始まるのは1955年のこと。

高度経済成長の直接的な要因は何か。今日は、この点を学んでいきます、と中野先生。

復習から始まって、高度経済成長につながる時代背景の説明。そして、今日の授業の方向性を簡潔に確認。

大学でも授業をしている、ということで難しい用語を連発するのでは、と考える向きもあるが、中野先生は”

今を生きる”生徒目線で授業をつなげる。生徒も、先生の質問にポンポン答える。

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ホワイトボードに「高度経済成長の要因」と書いて、「これが今日のテーマです。まず、抽象的な用語を書いて、そこから具体的に考えていくよ。」と中野先生。

①良質で安価な労働力

これを要因の第一に挙げたい。この言葉を聞いて、どんなイメージを持ちますか。

まず、「金の卵」って、知ってる?

「中学校を卒業して、就職した人のこと!」と答える生徒。

「中卒だけど、会社で能力を研いていった人!」

すると、教室のどこからか「上野駅!」とかけ離れた答えが飛んでくる。

中野先生は、「上野駅も関連はしますが、今はちょっと待って! 後で考えるから。」と授業の交通整理。

生徒の答えを引き出しながら、「中学校を卒業して、すぐに就職した人のこと。高い能力がある人が多かったので、“金の卵”と呼ばれた」と説明。

「ちょっと失礼な言い方かもしれないですが、」と前置きして、「中卒程度でも読み書き、計算ができ、会社で能力を伸ばすことができる。こんなことは外国では考えられませんでした。」

「その基礎はどこにあるかわかりますか?」と発問。

生徒とやり取りしながら、明治時代の学校制度に話が及ぶ。

その後、集団就職との関連で上野駅のことなどに話が展開した。
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中野先生によると、今まで経験してきた進学校での授業より、本校の授業ははるかに楽しい、とのこと。生徒の発想が豊かで、また興味を示してくれる。進学校では受験向けに政治経済用語を詰込み、大学入試に直接対応する授業をしなければならない。しかし、本校では生徒と一緒に授業を作って行ける。受験用に学んだ知識は入試が終わると忘れる。入試に合せて、“最大瞬間風速”的に(過ぎ去ったら忘れるが)知識を蓄えないといけない。しかし、クラスで考えながら出し合った知識は、具体的な話しを交えて理解しつつ学ぶので、自分のものになっていく。大学に入ってからもこういう知識が役立つと言うのだ。

質問をし、生徒の答えから授業を展開していく。このような生徒の発想力を活かしたブレイン・ストーミング的な授業を心がけている、とのこと。

もっとも、集中科目の「政治経済演習」など受験対策用の授業とは授業スタイルを変えているとの補足もあった。

今回の授業では、この後②国内市場の拡大=消費革命⇒三種の神器 ③「投資が投資をよぶ」に授業は展開していった。私自身、カリキュラム全体を統括するため、自分でも教科書や参考書を読むことがある。しかし、すぐに忘れてしまう。しかし、さすがに中野先生の授業を受けると高度経済成長の要因や時代背景がよく理解できた。

 総括

実践的な英語教育・国際教育に取り組んでいるインターナショナルスクールとして、外国人教員の授業が多い。しかし、本校は高校生として学ぶべきに日本人教員による高校教科も大切にしている。一般の高校との大きな違いは、少人数教育で生徒と対話をしながら授業ができること。中野先生は「ブレイン・ストーミング的な授業」と呼んでいる。名称やスタイルはいろいろあるが、アクティブ・ラーニングが本校の特徴。

「自分も高校生に戻って、このような授業を継続的に受けたい!」

そんな思いを抱かせる授業だった。

 

教育主任 滝本武

 

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